可憐な煌めきや、繊細でたおやかな美しさを散りばめた「KEITAMARUYAMA」を生み出してきたデザイナー・丸山敬太さん。
ラフォーレ原宿がKEITAMARUYAMAワールドで溢れる夢のようなプロジェクトを記念して、そこに込められた想いを伺いました。
――丸山さんから見て、原宿の街はどのような場所だと思いますか?
「いろんな在り方を肯定してくれる街、という気がするかな。それこそ80年代はローラー族や竹の子族、90年代になるとロリータや渋カジ、あらゆるファッションが共存しながら、お互いがお互いを認め合う不思議な場所ですよね。だからこそ若い人たちにとって、すごく居心地がいい場所なんじゃないでしょうか」
――生まれも育ちも原宿という丸山さん。原宿で過ごしたことは、ご自身のクリエイティブに影響があったと思いますか?
「やっぱり自分が見てきたものとか体験してきたことからクリエイションが生まれると思っているので、そういう意味では原宿という街が僕に与えた影響は大きいかもしれないですね。また原宿という場所ならではといえる、僕にとって人生の転機のような出会いがたくさんあったので、それはすごくラッキーだったなと思います」
――KEITA MARUYAMA TOKYO PARISがデビューした30年前は、クラブカルチャーやユースカルチャーの黎明期で、カルチャーの全てが原宿に集結しているイメージがありました。
「確かに。原宿のクラブで朝まで遊んで、友達となんとなく離れがたく、カフェで喋りながら始発を待って帰る朝の表参道の景色とか、めちゃくちゃエモかったな(笑)。原宿にはそんな宝物のような情景がたくさん詰まっていて、今でもすごく好きな街ですし、今回こういう形で30周年を一緒に楽しめることが、自分自身も嬉しいし、すごくわくわくしています」
――ラフォーレ原宿にとっても、30周年を一緒にお祝いできるのはとても光栄です。
「そう言っていただけると嬉しいです。ラフォーレ原宿は、シンボリックな場所ですよね。昔からいろんなブランドが集まるパワーがある場所というか。テイストが固まっているわけじゃなく、いろんなものが散りばめられている。いろんなタイプのアーティストが一堂に会するライブ会場みたいな楽しさが今も昔もある気がしています」
コラボレーションを通して、ものを作るよろこびやわくわくするほどのファッションの熱量を、次の世代へ、未来へと繋いでいきたい
――現在、30周年記念として行われているプロジェクト【丸山百景】では、ラフォーレ原宿の他にも人やもの、さまざまなコラボレーションを展開されていますね。
「今回30周年を迎えるにあたって一番考えたことって、僕がやってきたこと…作ってきたことや経験、アーカイブを、どう未来に繋いでいこうかっていうことだったんです。もの作りへの努力や情熱、質の高いクリエイションやわくわくするほどのファッションの熱量を、次の世代へ受け継いでいきたい。デジタルの出現で大きくいろんなものが変わったんだけど、今デジタルネイティブの子たちが社会に出て活躍する時代になってきてみると、もはやアナログとデジタルの垣根が本当の意味でなくなってきていると感じていて。服やものを作るということ、人の生きるよろこびみたいなものや、美しいと願う想いは何も変わらないなと。じゃあ、僕らがやってきたものを残さず隠さずすべて伝えてあげることができたら、すごくいい意味での新しいコラボレーションが生まれるんじゃないかなと」
――そんな素敵な想いから始まったプロジェクト。ラフォーレ原宿の16ショップとのコラボレーションはいかがでしたか?
「KEITAMARUYAMAの柄って結構強いと思っていて。皆さんどんなふうにお料理してくださるのかなって思っていましたけど。ちゃんと自分たちのアイデンティティに引き寄せつつ、KEITA MARUYAMAの新しい一面を引き出してくれているので、すごく楽しかったです」
――特に印象的なアイテムはありますか?
「僕自身がずっとすごくやりたかったことのひとつにロリータへの挑戦があって。Angelic Prettyとのコラボはすごく楽しかったです。一緒に作りながらいろんなことをお話したんですが、やっぱりロリータっていうのは孤高の精神を包む武装服なんだなっていうことを改めて感じて。生き様なんですよね。そういう崇高な世界に僕も携わることができて嬉しかったです。あとGR8は、いろんなモードデザイナーが僕のアーカイブをリメイクしてくださった一点物をお披露目販売していくので、見応えがあるんじゃないかなと楽しみにしています。あとはgroundsのスニーカーや、中央町戦術工芸のネコミミも、自分だけでは生まれない発想だったので、僕自身いろいろと刺激を受けました」
――同時開催される「ケイタマルヤマ遊覧会」では、30年の歴史に触れることができるかと思うのですが。
「ラフォーレミュージアムでは僕のクリエイションの原点となるコスチュームの展示を予定しています。アーティストの方がどういう発想でコスチュームを発注しているのか、どうやって形になっていくのかみたいなものが見られるようにしたいと考えています。表参道ヒルズはコレクションを軸に、僕の手元から生まれたデザインが生地や洋服になったりしたその先の、着てくださった方の物語も展示させていただくような、単なるアーカイブではない展覧会になると思います。もの作りが好きな方たちはもちろん、いろんな方に楽しんでいただけるんじゃないかな」
――まさに過去と未来をつなぐ遊覧会なんですね。最後に今後原宿にはどんな未来が待っていると思われますか?
「原宿ってめまぐるしく建物が変わったりお店が変わったりしているんだけど、でも最初に言ったような本質は変わっていない気がするんです。そしてこれからも…20年後も100年後も、その時代その時代の若者たちが、熱い想いを持って集まる場所であってほしいなと思います。多分そうあるのではないかなと思いますし、僕らがそういうふうに次へ繋げていかなきゃいけないなって思いますね」
丸山敬太 PROFILE
ファッションデザイナー。1965 年東京・原宿生まれ。94-95秋冬東京コレクションに「KEITA MARUYAMA TOKYO PARIS」として参加。1996年、東京・青山に旗艦店をオープン。1997 年には、98春夏パリコレクションに進出。DREAMS COME TRUEをはじめ、多くのミュージシャンやタレントの衣装を始め、日本航空(JALグループ)客室乗務員・地上接客部門の制服デザインを手がけるなど、ファッションの可能性に多角的な挑戦を続けている。